2006年05月02日

インセンティブ

『ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する』(スティーヴン・レヴィット,スティーヴン・ダブナー著)より、

イスラエルのある保育園では、親が子を午後4時には迎えに来なければいけないのに、遅刻が週平均で8件起きていた。
ある経済学者の考えで、遅刻すると子供一人につき3ドルの罰金を課すことにした。
その結果は予想を裏切り、遅刻は増え、週平均20件になった。

問題は罰金が安すぎることにもあるが、それ以上に「3ドル払えば遅刻してもいい」、という免罪符を親達に与えてしまったことが最大の原因である。

インセンティブには、道徳的インセンティブ(悪いことをしたくない)、社会的インセンティブ(悪いことをする奴だと思われたくない)、経済的インセンティブ(損したくない)があるが、このケースでは道徳的インセンティブを経済的インセンティブに置き換えてしまったということだ。
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2005年11月25日

Great Family Businesses

『同族経営はなぜ強いのか?』ダニー・ミラー、イザベル・ル・ブレトン=ミラー著、ランダムハウス講談社

アメリカ発の競争戦略論の隆盛の中、「同族経営」は厳しい市場を勝ち抜くことのできない「悪い経営」「古い経営」の代名詞でもあった。
本書は、敢えて同族経営の強さについての分析を試みている。
従来の分析では「同族経営というハンデを負いながらも、うまくマネジメントした結果成功している、という論調であった。
本書は、「同族でも強い企業がある」のではなく、「同族だから強い」という同族経営の強さの源泉を分析していることが注目に値する。
考えてみれば、日本でも武田薬品、サントリー、村田製作所、等々、強い競争力を維持している同族経営は多数ある。
また、ローテク業界だけではなく、変化の激しいハイテク業界でも同族経営は高いパフォーマンスを出していることがわかり、同族経営が実にイノベーティブであるということを立証している。同族経営は環境変化に弱いという通念を打ち破るものである。


以下、要約とメモ
・例えば2003年のS&P500社のうち、35%が同族経営の企業であった。また、75〜95年の同族経営企業上位200社の株式年間リターンは16.6%で、同時期のS&P500の14%を上回る。
・長期にわたって成長を続け、数十年間、市場でトップもしくは2位の座を維持している同族企業は以外にも多い。
・カーギル、ベクテル、ミシュラン、ホールマーク、NYタイムズ、フィデリティ、ウォルマート、イケア、リーバイス、モトローラ、クアーズ、JPモルガンなどなど。
・もちろん、同族経営につきもののリスクがある。保守主義、反労組主義、性・人種差別、身内びいき、家族の内紛、同族以外の投資家との対立など。それらの問題は、優れた同族経営でも多く見られる。しかし我々がそこに注目しすぎて、彼らの強さに目を向けず学び取ろうとしなかったのもである。
・ただそれを補って余りある同族経営の強さを、4C(Command,Continuity,Community,Connection)にまとめることができる。
・現在、同族ではない米国企業の経営陣は、強い経済的なインセンティブ、ストックオプションにより、短期的業績と短期間での株価上昇への圧力が強くかかっている。
・一方で同族企業は、長期的成長への強い責任感のもと、企業への誇り高き忠誠、強い結束を志向しており、非同族経営企業との対照は際立つばかりである。
・同族経営では、強い集団主義、長い在任期間、価値観の共有と結束、顧客、取引先との互恵関係、株主・市場からの自由、社員教育の充実、ブランドへの投資などを原動力として、市場を勝ち抜いている。


〜〜〜
かつての日本企業の強さの源泉は、まさに本書にあるような国際的に競争力を持つ同属経営企業にみられた、強い忠誠心と集団主義ではなかったか。
それらは不幸にも、旧時代の遺物とされ、バブル後は批判の対象となってきた。
海外の強い同族経営企業から、集団主義の優れた運用方法を学ぼうとせず、アメリカ企業から成果主義やリストラ手法を学んだ不幸が、現在の経済低迷の原因なのかもしれない。
日本人の伝統的な組織運営の感覚から言って、本書の同族経営ののほうが、より組織を強固にする可能性があるだろう。
ここ20年近く、本書のようなテーマに見向きもせず、安易な新しい経営手法を日本企業に合うかどうかの吟味もせず日本に紹介し続けた経営学者達、またそれを安易に受け入れた経営者の責任は重い。
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2005年08月26日

まず飛び込むということ

日産再生のカリスマ社長、カルロス・ゴーンの『ルネッサンス ― 再生への挑戦』(中川治子訳、ダイヤモンド社)より、

<日産のように、ビジネスや事業構造がいかんともしがたいほど日本文化に絡み合っている企業が抜本的な変革に着手するには、燃え盛る甲板(プラットホーム)が必要である。自分がいま、海の真ん中に浮かぶ、火事で燃え盛るプラットホームに立っていると想像してほしい。早く脱出しないと船もろとも海中に没してしまう。生き延びるには、たとえ行き着く先が見えなくとも、ある方向を選んで泳ぎ出さなければならない。重要な決断を下す際には燃え盛るプラットホームが不可欠である。日産はまさに焼け落ちんばかりに燃え盛るプラットホームに立っていたのである。>

一読して比喩が大げさにも聞こえる。
だが本書を通じて日産改革の困難さを知るにつれ、読者を惹きつけるための過激な表現ではないことがわかる。
「銀座の通産省」と呼ばれるまで硬直化した組織全体に危機感を持たせることが、現在の立ち位置を「沈没寸前の船の燃え盛る甲板」に例えなければならないほど困難であった、というのは、著者の偽らざる心境なのだろう。


同時に、かつて読んだデカルトの『方法序説』(落合太郎訳、岩波文庫)に、下記のような文章があったことを思い出す。

<旅人が森の中で道に迷ったならば、もちろん一か所に立ちどまっていてはならないばかりでなくあちらこちらとさまよい歩いてはならぬ。絶えず同じ方角へとできるだけ真直ぐに歩くべきである。たとえ最初にかれらをしてこの方角を択ぶに至らしめたものがおそらく偶然のみであったにもせよ、薄弱な理由のゆえにこれを変えてはならない。なぜなら、このようにするならば、かれらの望む地点にうまく出られぬにしても、ついには少なくともどこかにたどりつくであろうし、それはたしかに森の中にたたずむよりもよかろうから。>

森で迷ったならば、どっちでもいいから一つの方向にまっすぐ進め、と言っている。
うまく脱出できなくても、少なくとも今じっとしているよりは、どこかに(それがどこであれ)「たどりつく」から。

もちろんデカルトは旅のノウハウを語っているのではない。
山道の歩き方を説明しているのでもない。
別の箇所でも、デカルトはこう言っている。

<日常の道徳についていえば、きわめて不確実なものとわかっている意見にも、人はあたかもそれがまったく疑うべからざるものであるかのように、それに従うことが時としては必要であることを私は久しい以前から認め、そのことはすでに述べてもおいた。>

どのような倫理も人生観も不確実であるが、その不確実性ゆえ倫理や道徳を不要とするような懐疑論を、最も嫌悪すること。
ゴーンの表現する日産の危機意識は、留まり続けることの危険性をよく伝えている。
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2005年08月06日

決断力不足組織の兆候

『組織戦略の考え方−企業経営の健全性のために』沼上幹著、ちくま新書

決断力不足の組織の兆候として、以下の三つを挙げている

1.フルライン・フルスペック要求
2.経営改革検討委員会の増殖
3.人材育成プログラムの提案

その「1.フルライン・フルスペック要求」について、

<仕様書ばかりでなく、戦略計画も同様に全方位全面戦争型のものが出てきたら要注意である。成長率・新製品導入比率・ブランドイメージ・粗利益率・売上数量・対象地域数等々、多様な目標数値のすべてに関して、競争相手と同等かそれ以上を書き記しているような戦略計画が出てきたら、何も考えていないことの証である。>
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2005年01月10日

責任

元NEC代表取締役会長 関本忠弘
防衛庁調達実施本部の背任。汚職事件に絡んで代表を辞したが、
<事件が起きたことに対する自らの責任を問う質問には、笑いながら反論した。
「下に対してすべての責任はあるのだろうか。あるのなら、あらゆることが総理大臣に責任があることになってしまう」>
(朝日新聞、平成10年10月24日)
この企業では責任とは何かすら学ぶ機会がないのか。
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ゴーン流

日産リバイバルプランについての講演

「価値観の変革」のキーワード
1.Cross Functional & Diversity
2.Commitment & Target
3.Variable Compensation & Stock Option
4.Top to Bottom (Communication)
5.Performance Oriented, Customer Focused,・・・
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