『同族経営はなぜ強いのか?』
ダニー・ミラー、イザベル・ル・ブレトン=ミラー著、ランダムハウス講談社
アメリカ発の競争戦略論の隆盛の中、「同族経営」は厳しい市場を勝ち抜くことのできない「悪い経営」「古い経営」の代名詞でもあった。
本書は、敢えて同族経営の強さについての分析を試みている。
従来の分析では「同族経営というハンデを負いながらも、うまくマネジメントした結果成功している、という論調であった。
本書は、「同族でも強い企業がある」のではなく、「同族だから強い」という同族経営の強さの源泉を分析していることが注目に値する。
考えてみれば、日本でも武田薬品、サントリー、村田製作所、等々、強い競争力を維持している同族経営は多数ある。
また、ローテク業界だけではなく、変化の激しいハイテク業界でも同族経営は高いパフォーマンスを出していることがわかり、同族経営が実にイノベーティブであるということを立証している。同族経営は環境変化に弱いという通念を打ち破るものである。
以下、要約とメモ
・例えば2003年のS&P500社のうち、35%が同族経営の企業であった。また、75〜95年の同族経営企業上位200社の株式年間リターンは16.6%で、同時期のS&P500の14%を上回る。
・長期にわたって成長を続け、数十年間、市場でトップもしくは2位の座を維持している同族企業は以外にも多い。
・カーギル、ベクテル、ミシュラン、ホールマーク、NYタイムズ、フィデリティ、ウォルマート、イケア、リーバイス、モトローラ、クアーズ、JPモルガンなどなど。
・もちろん、同族経営につきもののリスクがある。保守主義、反労組主義、性・人種差別、身内びいき、家族の内紛、同族以外の投資家との対立など。それらの問題は、優れた同族経営でも多く見られる。しかし我々がそこに注目しすぎて、彼らの強さに目を向けず学び取ろうとしなかったのもである。
・ただそれを補って余りある同族経営の強さを、4C(Command,Continuity,Community,Connection)にまとめることができる。
・現在、同族ではない米国企業の経営陣は、強い経済的なインセンティブ、ストックオプションにより、短期的業績と短期間での株価上昇への圧力が強くかかっている。
・一方で同族企業は、長期的成長への強い責任感のもと、企業への誇り高き忠誠、強い結束を志向しており、非同族経営企業との対照は際立つばかりである。
・同族経営では、強い集団主義、長い在任期間、価値観の共有と結束、顧客、取引先との互恵関係、株主・市場からの自由、社員教育の充実、ブランドへの投資などを原動力として、市場を勝ち抜いている。〜〜〜
かつての日本企業の強さの源泉は、まさに本書にあるような国際的に競争力を持つ同属経営企業にみられた、強い忠誠心と集団主義ではなかったか。
それらは不幸にも、旧時代の遺物とされ、バブル後は批判の対象となってきた。
海外の強い同族経営企業から、集団主義の優れた運用方法を学ぼうとせず、アメリカ企業から成果主義やリストラ手法を学んだ不幸が、現在の経済低迷の原因なのかもしれない。
日本人の伝統的な組織運営の感覚から言って、本書の同族経営ののほうが、より組織を強固にする可能性があるだろう。
ここ20年近く、本書のようなテーマに見向きもせず、安易な新しい経営手法を日本企業に合うかどうかの吟味もせず日本に紹介し続けた経営学者達、またそれを安易に受け入れた経営者の責任は重い。