2012年06月19日

太陽に噛みつかれて

smokin' sisters.jpg


現実、――ぼくの唇が火傷しないのがむしろ不思議というべきだろうか、ぼくは毛髪という言葉と同じようにそれを発音しているのが不思議である。現実についてぼくに許された発言の最大限を計量することなどは、どんな尺度によっても可能ではない。度量衡はみずから焼きつくすだろう。絶対にぼくは現実の価値評価をしつつあるのではない。何ものにも値いしないことによって、辛うじて発言することができるのだということによって、現実こそは純粋である。ぼくはこのような断言がなんらの哲理的な思想にも達しないことを知っている。またぼくはいまそれを欲している。太陽に噛みつかれたようなアフリカの蕃人の特殊な黥(いれずみ)に、ぼくの現在の文章が比較されるとしても、ぼくは少しの不満も抱かないだろう。ぼくの意図はむしろ太陽に噛みつかれておくことだ。反省と称せられるものはどのような種類のものにしろ、現実と一致することがないということを日まわりの花とともにぼくが力説するとしても、ぼくはプラトニックなトリックを用意しているのではない。物質の世界ではなく、また感覚の世界ではなく、ぼくには特異な、ある無秩序から出発しなければならなかった。

『シュルレアリスムのために』瀧口修造
posted by ysms at 19:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 01 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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