2010年09月14日

時間を消す


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時間というものには、ふたとおりの数えかたがあるように思われる。ひとつは、一から始まってこれに、無限に一単位(年でも秒でもいいが)ずつ加えて行くやり方で、私たちはそのようにして、小刻みに未来を生きている。もうひとつは、たとえばロケットの打ち上げの時の秒読みのように、あらかじめ未来へ区切った時点へ向けて、一単位ずつ時間を消していくやり方である。残り時間がゼロになったときそれが起こる。未来が終るのである。戦争中、私たちに可能であったのは、ただ後者の数え方であり、戦場から兵士が書き送る書簡の一つ一つは、このようにして消去されて行く時間の確認にほかならなかったのである。

『海を流れる河』石原吉郎著


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